
介護にかかる費用を考える上で欠かせないのが公的介護保険制度(通称:介護保険)です。
この制度は、65歳以上または40歳ー64歳で特定疾患に該当する人が、要支援1・2あるいは要介護1~5に認定された場合に、介護保険サービスを受けられるものです。
具体的には、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスや特別養護老人ホームや介護老人保健施設への入所などの施設サービスを、l~2割の自己負担で利用できます。
介護保険を利用するには、要支援または要介護の認定(介護認定)が必要で、さらにサービス利用を希望する際には、所定の手続きが必要で、それらに関する相談は市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談することになります。
地域包括支援センターは、公的な「高齢者福祉の総合相談窓口」で、介護保険に関することだけでなく、その他の福祉サービスや日常生活での困りごとなど、幅広い相談を受け付けています。
※(一社)認知症予防協会のHPで全国の地域包括センター一覧が確認できます。
相談した上で介護保険利用の必要性が高いと判断されると、要介護認定の申請から希望する支援内容に適した居宅介護支援事業所の紹介まで、すべて面倒をみてもらえます。
その後、本人、家族にケアマネジャー、介護の担当者、主治医などを交えた話し合いによって、必要な介護サービスの種類や量を決めていくわけです。
スポンサードリンク
同居家族の存在は大きい
介護方針を決定する上で大きな存在となるのが同居家族です。介護を受けながら在宅での生活を続けていく場合、一緒に生活し、家事や見守りをしてくれる家族がいることは重要な要件です。
実際、現在の介護保険の在宅サービスは、いわば同居家族ありきの制度設計です。
なので、単身者の場合は、要介護2~ 3以上の状態になると、介護保険利用のみでは在宅での生活は難しくなります。
たとえば、要介護5の人が毎日3回、朝、昼、夜に各1時間ずつ訪問介護を利用するだけで、ほぼ限度額に達してしまいます。要介護5つまり最も重い状態にある人が、1日3回の訪問介護を利用するだけでは在宅生活が維持できるはずもなく、単身者の場合は、そこでどうするかの選択を迫られるということになります。
この場合の選択肢としては、
- 家族と同居するか家族、知人等の支援を受ける
- 介護保険での不足分は保険外の自費サービスを利用する
- 介護保険施設に入所する(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームなどに入所する
の4つが考えられます。
そして、このような場合に要する介護費用は、本人の身体状況や生活環境、家族構成などによって大きく異なります。
ちなみに、1が可能な人ならば、介護保険外で必要になる費用はそれほど多くならない可能性がありますが、2の場合には、24時間必要なときにいつでも介護が受けられるようにするためには、それなりのコストを要するでしょう。
さらに、1、2ともに不可の場合は、施設入所で対処することになります。
3であれば、介護費用面では比較的低めに抑えられる手段です。
本人の所得によって負担が異なりますが、相部屋(多床室)であれば国民年金の受給額以下で入所できることもあり得ます。
ただ、特養ホームは、ピーク時と比べれば待機者は減ったとはいえ、まだまだ待機者が多いという実情があります。
また、2015年度から入居条件が要介護3以上に限定されたため、これに該当しない場合には入居者対象になりません。
一方、4のサ高住については、戸数が整備されつつあり、待機期間も少なめで比較的入所しやすい状況です。
が、入居費が月額17万ー25万円程度必要になるところが多いため費用面でのハードルは低くありません。
要介護度による身体の状態
度合い | 認定 | 身体状況(目安) |
軽 | 要支援1 | 日常生活能力は基本的にあるか、要介護状態とならないように一部支援が必要 |
〃 | 要支援2 | 立ち上がりや歩行が不安定。排せつ、入浴などで一部介助が必要だが、身体の状態の維持または改善の可能性がある |
〃 | 要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定。排せつ、入浴などで一部介助が必要 |
中 | 要介護2 | 自力での起き上がりが困難。排せつ、入浴などで一部または全介助が必要 |
〃 | 要介護3 | 自力では起き上がり、寝返りができない。排せつ、入浴、衣服の着脱などで全介助が必要 |
重 | 要介護4 | 日常生活能力の低下が見られ、排せつ、入浴、衣服の着脱など多くの行為で全介助が必要 |
最重 | 要介護5 | 介護なしには日常生活を営むことがほほ不可能な状態。意思伝達も困難 |
スポンサードリンク
介護保険の自己負担は1、2割
介護保険では要介護度ことに1ヶ月間に利用できるサービスの上限額(限度額)が決められており、自己負担額は利用料の1割または2割です。
さらに、上限を超えて利用した分は、全額自己負担になります。
自己負担割合が1割か2割かは所得によって決まります。
サービス利用の限度額と自己負担割合
区分 | 認定 | 支給限度額 |
自己負担額 (1割) |
自己負担額 (2割) |
予防給付 (予防サービス) |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 |
〃 | 要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 |
介護給付 (介護サービス) |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 |
〃 | 要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 |
〃 | 要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 |
〃 | 要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 |
〃 | 要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 |
※金額は月額。介護保険は1単位=10円換算。
認定を受けた本人の合計所得金額が160万円以上なら2割負担、未満なら1割負担が原則です。
ただし、65歳以上の人が2人以上いる世帯では、総所得金額(全員の合計)が346万円未満の場合は1割負担です。
要介護認定を受けた人に、毎年、自治体から送付される「介護保険負担割合証」で自己負担割合を確認することができます。
スポンサードリンク