老人ホームの入居手続きと注意点

笑顔の老夫婦

さまざまな工程を踏んで気に入った施設が見つかったなら、いよいよ入居契約ですが、その際には、日常生活ではあまり目にしない書類(契約書や重要事項説明書など)を読み込まなければなりません。

いくらとっつき難くても、後々「こんなはずではなかった・・・」とならないように、一文字一文字しっかりと確認してください。

「よくわからないけれど、まぁいいか」などというのは厳禁です。

契約してしまえば、納得できる、できないに関わらず、書面に記載されていることが100%だということをお忘れなく。

以下に、契約に当たって確認すべきポイントや注意事項を挙げておきますので、参考にしてください。

 

スポンサードリンク


 

高齢者施設の契約形態と支払いについて

 

契約書類

高齢者施設と一言でいっても、実際には施設によって契約形態や利用料の支払い方式が異なります。

入居後の権利関係や支払金額に直接影響するポイントなので、契約前にしっかりと理解してください。

契約形態の代表的なものは、有料老人ホームの多くが採用している利用権方式です。

これは、入居一時金(前払い金)を支払うことで、居室と共用施設を利用する権利と介護や生活支援のサービスを受ける権利について、終身にわたって保障されるという契約です。

一方、サ高住では、住宅に関する建物賃貸借契約を結んだ上で、必要に応じて別途、サービス利用契約を締結するという契約形態がとられています。

また、特養や老健、クアハウスでは、入所サービス利用契約を結びます。

契約形態については、文字を見ればなんとなくイメージできるかもしれませんが、実際、利用権方式と賃貸借方式には大きな違いがあります。

利用権方式には根拠法はありません。

あくまでも、施設と入居者の間で交わした契約でしかなく、往々にして施設側に有利に設定されています。

仮に何らかのトラブルが発生した場合には、施設側から契約解除できる項目が設けられていることが一般的です。

さらに、入居中に経営者が変わった場合には、その契約内容は継承されません

それに対して、賃貸借方式では、借地借家法という法律によって入居者の権利が保護されており、施設側の都合で退去させられることはありません。

もちろん、経営者が変わっても契約は継承されます

このように、将来のリスクに差があるので、契約する際には、その施設の契約形態はどういうものなのか、を必ず確認することが大切です。

 

高齢者施設に採用されている主な契約形態

利用権方式

居住部分と介護や生活支援などのサービス部分の契約が一体となっている。

※特養、老健では入所サービス利用契約

建物賃貸借方式 賃貸住宅における居住契約であり、居住部分と介護・生活支援サービス部分の契約が別々になっている。
建物賃貸借方式(終身) 賃貸借方式に、入居者の死亡をもって契約を終了するという特約が付帯している。

 

 

契約方式による支払い方法

入居一時金(前払い金)」を設定している施設では、一般的に下記4つの支払方式のいずれかが採用されています。

支払い方式によって入居後に支払う金額が大きく異なるため、契約前に理解しておくことが必要です。

  • 全額前払い方式:終身にわたって必要な家賃分などを前払いとして一括して支払う
  • 月払い方式:家賃を月払いする(前払い金はなし)
  • 前払い/月払い併合方式:終身にわたり必要な金額の一部を前払い金として、残りを月払いする
  • 選択方式:入居者が、全額前払い方式・月払い方式・前払い/月払い併合方式を選択できる

 

運営事業者の経営状態について

 

「施設に入居後、事業者が倒産したら・・・」、あってはいけないことですが、現実に起こりうる事態です。

100%は困難ですが、できる範囲でチェックしましょう。

経営状態を見極めるにはまず、施設の入居率を把握してください。

たとえば、有料老人ホームの収益分岐点は、開設後2年で入居率80%程度といわれています。

もし、入居を検討している施設の入居率がそれより低い場合は、直接質問するなどして理由を確認してください。

また、職員の平均勤務年数などで定着状況を把握することも、安定した運営がなされているかどうかの判断材料になります。

これらのことは、重要事項説明書でも確認できます。

運営事業者が複数の施設を経営している場合には、入居を検討しているところだけでなく、他の施設の重要事項説明書にも目を通してください。

中には、高齢者施設運営以外の事業に取り組んでいる事業者も少なからずあります。

そういった場合には、事業者の主要な事業を確認し、できれば会社の財務諸表などを手に入れて、事業全体に不安がないか確認したいところです。

もちろん、書面上に問題が見当たらないからといって倒産や事業撤退のリスクがないわけではありませんが、入居前にできる範囲で確認しておくことは、無駄ではないと思います。

自身で決算書類などの理解が難しければ、経理関係の知識がある親族や会計事務所などに相談するのがよいでしょう。

施設(事業者)の経営状態のチェックポイント

  • 施設運営者の主たる事業
  • 施設の設立年月
  • 経営者の変更経歴(ある場合はその理由)
  • 職員の人数や勤続年数および定着率
  • 入居者数や入居率、退去状況
  • 経営状況の判断する基になる財務諸表などを公開しているか、またその内容

一般的に考えれば、

入居率高→経営が安定→人員が整う→サービスが充実 →評判が上がって入居者が増える

という好循環が生まれるはずです。

逆に、入居率が低ければ悪循環に陥りやすいということ。

なので、あまりに入居率が低い施設は選択肢から外した方が賢明です。

 

重要事項説明書とは

 

重要事項説明書(重説)は、施設の概要や職員の配置状況、サービス内容、費用など、施設を選ぶ際に欠かせない情報をまとめた詳細な説明書です。

施設に関する資料としてはパンフレットが一般的ですが、重説にはパンフレットだけではわからない事項が記載されています。

施設の概要はもちろん、職員体制、サービス内容、利用料、入居率や退去理由など入・退去者の状況などが詳しく記載されており、さらに協力医院などを含む医療体制や介護度が上がった場合に住み替えが必要ならその内容、入居・退去の要件なども確認できます。

パンフレットと一緒に入手できますので、入居を検討するなら必ずもらってください。

重説の書式に関しては、施設によって、あるいは都道府県によって異なりますが、厚生労働省や各都道府県では、入居を検討している高齢者自身が比較検討できるよう「わかりやすく」表記するよう指導しています。

しかし、見落としや勘違いがあってはいけないので、できれば家族・親族にも目を通してもらい一緒に確認してもらうとよいでしょう。

 

スポンサードリンク


 

高齢者施設の身元引受人と保証人

 

高齢者施設では、入居に際して身元引受人あるいは身元保証人を求められます。

名称はともかく、入居契約書には通常、「身元引受人の権利義務」に関する項目があり、「連帯して債務を負う者」と規定され、該当者は署名捺印することになります。

一般的には子や兄弟などが担いますが、もちろん親族以外でもかまいません。

また、施設によっては1名ではなく2名必要だったり、身元引受人と連帯保証人を分けているところもあります。

引受人や保証人は、支払いが滞った場合の金銭保証はもちろん、疾病や入院などで緊急に相談対応が必要になった場合に医療処置の判断を下す役割もあります。

さらに、死亡時には遺体の引き取りを行う責任があります。

要するに、何かあったときには責任をもって迅速に対応することが求められる立場ということです。

身元引受人の役割

  • 入院時の対応協力
  • 医療処置に対する同意
  • 施設利用料などの支払い責任
  • 死亡時の遺体および遺品の引き取り
  • その他の緊急連絡対応や契約解除などの相談対応

 

金銭面での連帯保証に関しては、(一財)高齢者住宅財団の家賃債務保証制度を利用できる施設もあります。

これは、連帯保証人を立てられない入居者の家賃債務などを保証して、賃貸住宅への入居を支援する制度です。

しかし、この制度を利用した場合も、身元引受人は立てなければなりません。

 

(一財)高齢者住宅財団の家賃債務保証制度の概要

対象世帯 60歳以上、または要介護・要支援認定を受けている60歳未満など
保証対象
  1. 滞納家賃(共益費・管理費を含む)
  2. 原状回復費用および訴訟費用
保証料 2年間の保証の場合、月額家賃の35%

 

高齢者施設の賠償責任について

足を怪我して寝込む老人

高齢者が施設に入居すると、何となく自宅での生活に比べて安全だと考えてしまうかもしれません。

しかし、施設に入居したからといって、ケガと無縁になるわけではありません。

実際に、施設内で事故が起こることは珍しいことではなく、転倒やべッドや車いすからの転落による骨折などは発生しやすい事故です。

あるいは、集団食中毒などが起きることもあるかもしれません。

いずれも「あってはいけないこと」ではありますが、いざ事故が発生した場合には、冷静に判断しなければなりません。

つまり、予見可能なものだったのか、不可抗力の事故なのか分けて考える必要があるということです。

施設の職員も、24時間そばで見守っていられるわけではないので、入居者本人による「うっかり事故」については不可抗力な事故と捉えて、個人にも責任があることを理解しましょう。

逆に、施設側の不注意や不手際で発生したものならば、それなりの対応を求める必要があります。

 

事故対応は重要事項説明書で確認できる

事故が起きた際の対応については、重要事項説明書に記載されているはずです。

事故に対する体制や損害賠償責任保険への加入状況などについて詳しく書かれていますので、事前に読んでおきましょう。

入居後万が一事故が起きた場合には、提供された介護内容などを記した当日の記録を閲覧して、事故が起きた経緯について説明を求めてください。

事故に対する賠償責任の有無はもちろん大切ですが、事故を繰り返さないための対策などを聞くことも重要です。

もしどうしても納得できない場合には、重要事項説明書に記載されている苦情受付窓口などに相談してください。

高齢者施設での苦情やクレームを受け付けている窓口としては、

  • 施設内の苦情対応責任者や第三者委員会
  • 市区町村役場の介護保険担当窓口
  • 都道府県国民健康保険団体連合会の担当窓口
  • 都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会

などがあり、各機関に相談すると、本人の意向を確認した上で事情調査を行い、解決に向けた助言や両者の話し合いの場の設定が行われます。

余談ですが、日ごろから施設の職員とコミュニケーションがとれていると、こうしたトラブルについて率直な意見交換ができるので、定期的に開催される運営懇談会などには積極的に参加しておくことをおすすめします。

 

入居一時金の保全について

 

日本の社会構造の変化に伴って高齢者向けサービスの市場が拡がる一方で、

  • 現場職員の確保が難しい
  • 入居者確保が進まない
  • 資金面が安定しない

など、あるいはその他の経営課題を抱える事業者も少なくないのが現状です。

言い換えれば、民間の事業者には倒産リスクがあり、高齢者施設や介護関連事業者も例外ではないということです。

実際、過去には、有料老人ホームや介護事業者の倒産が発生しており、金銭的な被害を被った消費者もいたことから、2006年4月以降に開設された有料老人ホームには、入居一時金の内、まだ住んでいない分の家賃相当分が、500万円を上限に保全される一時金の保全措置が義務づけられています。

ただし、この保全措置は、2006年3月末以前に開設された有料老人ホームには適用されていないので、注意が必要です。

保全のある・なしの確認は、契約書面に下記のようなー文があるか否かで可能です。

 

当社は、老人福祉法および厚生労働省令等に基づく一時金の保全に関し、〇〇信託銀行との信託契約に基づき保全措置を講じております。同信託銀行は、下記保全金額を信託財産として管理し、所定の事由により本物件の運営が困難になった昜合には、信託財産の範囲内で保全金額の返還を行います。

保全金額:入居一時金の返戻金計算式により算出した返還金の合計額または500万円のいずれか低い額

※これは保全措置について契約書に書かれている文章の一例です。

 

また、(公社)全国有料老人ホーム協会に加盟している有料老人ホームであれば、仮に返却不能に陥っても、入居者生活保証制度によって協会から返金されます。

この制度は、加盟事業者が各施設の入居者1人あたり20万円(満80歳以上については13万円)を協会に拠出することで、返済原資が確保されています。

入居者がこの制度を利用するためには、事業者との間で入居契約追加特約書を締結する必要があります。

 

クーリングオフ

クーリングオフの表示

有料老人ホームなどに入居する際に前払いする入居一時金については、小さい金額ではないため、多くの入居希望者(家族も含めて)「もし、馴染めなかったらどうしよう」と不安に感じています。

実際、スグに退去する(させられる)とか入居後わずかの期間で死亡したなどの際にはトラブルになることも少なくありません。

そのような問題を回避するために、現在は老人福祉法が改正され、90日以内の契約解除に伴う一時金の返還が法制化されています。

これは消費者を保護するクーリングオフ制度で、一般的には90日間ルールと呼ばれ、施設との契約上は短期解約特例制度という名目になっています。

この制度により、3か月以内の退去や死亡では、入居一時金から実際に居住した期間の家賃分と居室の原状回復費用を差し引いた残りの金額が返還されます。

ただし、入居契約の際には、法律があるからと油断せず、重要事項説明書中の短期解約特例制度の条項をしっかりと確認してください。

念には念をいれることは無駄にはなりません。

仮に、91日以上経過してクーリングオフ適用期間外となっても、償却されていない分の前払い金は戻ってきますが、90日の前か後では返還金額の違いが大きいのが実情です。

なので、老人ホームに入居したけれど、どうしても環境に馴染めないとか、サービスへの不満が大きいという場合には、90日を期限と考えて退去を検討するようにしてください。

逆にいえば、有料老人ホームの見極めは90日以内に行うべきだということです。

 

高齢者施設の入居者面談について

 

数々の工程を踏んで、入居を希望する施設が見つかれば契約に至るわけですが、通常、契約前には施設側からの面談があります。

施設見学が、入居(希望)者側から施設を見定める機会だとすれば、面談は施設側が入居希望者を見定める機会といえるでしょう。

入居希望者が施設へ出向いて面談を受けるのが一般的ですが、在宅介護や入院中などで移動が困難な場合には、施設側から会いに来てくれます。

面談には身元引受人(保証人)も立ち会う必要があり、施設長やケアマネージャーらが入居希望者の心身の状況や引受人の人柄などを、入居生活が支障なくおくれるかどうかの観点で判断します。

入居希望者側はいくら面談を受ける立場とはいえ、せっかくの機会なので、今後の生活を安心して任せられる事業者かどうかをしっかり見定めましょう。

また、入居が許可されると仮定した場合の入居日程などについても話を聞いておくことも有益です。

面談の結果は数日内に、電話もしくは書面で通知されます。

入居の許可がおりたら契約日を決定して契約に臨みます。

 

高齢者施設の入居契約

 

契約で交わす主な書類は下の通りです。

  • 入居申込書
  • 入居契約書
  • 介護保険サービスの利用契約書
  • 重要事項説明書
  • 管理規程

※上記は参考例であり、施設により書類・書式が異なります。

 

契約の流れとしてはまず、重要事項の説明を受けて、すべての事項に同意したら署名・捺印します。

契約書の内容について不明点がある場合には、必ず質問して、すべての疑問を解消してからサインしてください。

原則的には、契約実行は入居者本人が行いますが、本人の心身状態等によって自署/押印できない場合には、成年後見人を立てている場合は後見人が、後見人を立てていない場合は家族が代行することが一般的です。

契約書にサイン(押印)するということは、その契約内容を理解して納得したという証拠です。

後から「知らなかった!」「聞いていないよ!」といっても通用しません。

なので、しっかりと内容を理解した上で締結することが重要です。

また、契約時に交わした(受け取った)書類は、後々トラブルが発生したときに確認する必要が生じるかもしれないので、すべて保管しておきましょう。

 

スポンサードリンク


 

 

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*